こちらでは、特別養護老人ホームの開設を検討している方に向けて、役立つ情報を紹介しています。施設の種類やニーズ、得られるメリット、費用の内訳、そしてさまざまな注意事項などについてまとめました。
特別養護老人ホームは、広域型、地域密着型、そして地域サポート型の3つに大きく分けられます。それぞれコンセプトや業態が異なります。
広域型の特別養護老人ホームは、3つのタイプの中で、もっとも一般的な形態の施設だといえます。30名以上の定員にすることが可能で、かつ、入所条件についても入居希望者の居住地の縛りがありません。施設を建設する場所についても、エリアの特徴などにあまり強いこだわりのない方の入所を募りやすいため、立地にそれほど頭を悩ませる必要がないです。
全体的に自由なイメージを受けるかもしれませんが、他のタイプの特別養護老人ホームと同じで、医師や看護師、機能訓練指導員、介護支援専門員などについては配置基準が設けられているため、それに違反することのないよう注意が必要です。
地域密着型の特別養護老人ホームは、入所できる定員が29名以下に設定されています。少人数制の施設だといえるでしょう。原則的には、施設がある地域で暮らしており、かつ要介護3以上の認定を受けた方のみが利用できる施設として位置付けられています。
なお、このタイプの特別養護老人ホームは、業態の種類により、さらに「サテライト型」「単独型」の2つに分けられます。サテライト型は、広域型特養などの本体施設があり、人員配置基準や設備基準がゆるめに設定されています。一方、「独立型」は本体施設がなく、地域密着型でアットホームな雰囲気を大切にしている施設です。
地域サポート型の特別養護老人ホームは、65歳以上で、かつ地域内で在宅介護生活を送る高齢者を対象とした施設です。生活のサポートや見守りサービスなどを提供しています。また、朝や昼の時間帯には生活援助員が施設利用者の住まいを巡回訪問し、夜の時間帯には看護師が待機しています。そのため、1年じゅう途切れることなく、対応可能な体制が整っています。
厚生労働省の発表によると、令和3年度末における特別養護老人ホームの施設数は1万469施設、そして定員数は65万1,848人で、いずれも前年度よりも増加していることがわかります。
また、特別養護老人ホームなどの運営を行っている社会福祉法人数も増加傾向にあり、かつ高齢化社会が進む現状をあわせて考えると、今後も特別養護老人ホームに対する需要が引き続き高まっていくと予想されます。
【広域型・地域密着型の特別養護老人ホーム 開設までの流れ】
【地域サポート型の特別養護老人ホーム 開設までの流れ】
特別養護老人ホームを建設するためには、およそ300坪~400坪の広さがある土地を購入する必要があります。土地の価格はエリアによって大きく差があり、また変動幅も大きくなります。ただ、ひとつの目安として、数百万円~数千万円が必要になると考えておきましょう。
施設建設のために必要な費用全体において、おそらく最も大きな割合を占めることになると見込まれるのが、建築費です。
特別養護老人ホームを建築する際には、国によって定められている設備基準をクリアする必要があります。面積の基準や火災予防を目的とした設備、介護をするための専用設備、食堂、浴室、洗面設備ほか、さまざまな設備について多数の基準があり、それらに違反しないよう注意して建築を行うことが求められます。
そのため、建築費は、控えめに見積もったとしても、数千万円以上にのぼると見込んでおいてください。
入居者が使用するベッドや専用の設備、スタッフが使用するテーブル・イス、さらに事務用品など、さまざまな備品を揃えるための費用がかかります。
特別養護老人ホームを開設するためには、社会福祉法人を設立する必要があります。特別養護老人ホームが、民間の社会福祉事業の実施主体としての介護保険事業であることが、その理由です。ですから、社会福祉法人の定義についても理解を深めておくことが大切です
社会福祉法人は配当を認められていない非営利法人なので、一般的な企業のように、利益を追求することに重きを置く営利法人とは性質が異なります。 公益性や透明性をさらに高めるために社会福祉法の改正が行われた経緯をふまえると、その点を頭に入れておくことが重要だといえます。
特別養護老人ホーム建設について、国が設置基準を設けています。施設を建設する際には、あらかじめその内容を理解しておく必要があります。 日照や採光、換気といった保健衛生面に関することのほか、居住空間の面積や設置すべき設備などについて定めています。なお、設置すべき設備に関する項目数は、計16あります。居室や静養室、食堂、浴室などの設備がこれに含まれます。
また、各空間における入居者1人あたりの床面積についても基準が設けられているため、施設のキャパシティーを先に決めておくようにしてください。 さらに、レイアウトについては、たとえば「静養室を介護職員室あるいは看護職員室に近接させる」などの決まりがあります。
ですから、繰り返しになりますが、事前に設置基準に目を通しておくことが、重要だといえます。